動物と植物の決定的な違いは「光合成」
動物と植物は何が違うのか。そんなことはわかりきっているじゃないか、と考える人もいるでしょう。
しかし生物の中には、見た目だけでは動物か植物かが判別できないものもあるのです。
動物と植物の違いには一般的にいくつかの定義があり、その一つが「光合成」です。
生命を維持し、成長し、子孫を残すためにはエネルギー(栄養)が必要になります。消費したエネルギーを補充するための手段として光合成を行うのが植物、そうでないものは動物という分け方です。
●海底にいる植物のような動物
海底の岩に張り付き岩のように動かないサンゴ。人間からみると一見動物として認識することはないでしょう。
サンゴの仲間であるオオトゲトサカもポリプという行動がたくさん集まった構造をしており、ポリプがプランクトンを捕食して栄養を取り込みます。
体内に要る微生物が光合成をした栄養を取り込むことはあってもオオトゲトサカ自信が光合成をするわけではないので「動物」に分類されます。
栄養を必要とするか自分で作るかが動物と植物の違い
植物が光を浴びて体内に持つ光合成色素で生命維持に必要な栄養を作り出します。土や水、太陽の光があれば自信の体内で栄養を作り、消費することを繰り返して生きています。
しかし、動物は光合成ができず活動によって消費したエネルギーは、他の動植物を食べることで摂取しなければなりません。
光合成の仕組みは実に良くできたものです。一般的な植物であれば土の中にある水分を植物の体内にある葉緑体で分解し、太陽の光によってデンプンを作り出します。
ここで残った酸素は空気中に放出され、私たち動物はその酸素の恩恵を受けることになります。
酸素だけではありません。こうして植物が巧みな構造で生み出した栄養を食べることによって、動物は自身では作れない栄養を補うことができるのです。
植物が存在しなければ動物は生きていくことができないでしょう。
木々や草花、藻や苔といった全ての植物は、動物が生きていくために必要なものなのです。
動物は動けるのに対し植物は動かないのが違いのひとつ
動物と植物では何が違うのか、と問われたら多くの人が「動くか、動かないか」と考えるのではないでしょうか。
もちろん、それが一番分かりやすい動物と植物の違いです。しかし、絶対というわけではありません。
動物に分類される中にも動くための筋肉を持たず、食べるための口を持たないものもいます。
●動物なのに動かない生物
・サンゴ…群体であるポリプがプランクトンを捕食したり、褐色藻から栄養をもらっています。
・海綿…体の中を海水が通り抜けるときに微生物などを濾し取って摂取します。わずかに繊毛を動かす以外動くことはできません。
●植物なのに動く生物
・オジギソウ…羽のように小さな葉がびっちりと並んだオジギソウは、触れると向かい合った小さな葉が閉じ、うなだれたように枝が下がる姿からその名がつきました。
・ハエトリグサ(食虫植物)…向かい合った葉にはセンサーのようなトゲがあり、ハエなど虫が二度触れると葉が閉じて虫を捕まえます。
植物が動くには非常に大きなエネルギーを消費するので、虫以外の刺激で誤作動しないようになっているようです。
動物と植物の共通点とは
ここまで紹介してきたように、動物と植物には明確に違う部分があります。
その一方で、共通している部分も存在します。
・その体が細胞でできている
・細胞にはDNA(遺伝情報)が含まれている
・環境に適応し、体の構造を変化させる
・自分以外に存在するエネルギーを利用して生きている
細胞の構造にも共通点があり、細胞核に含まれる遺伝情報によって体が構成されたり、再生・複製を行います。
細胞を形作る細胞質の中身にも共通した部分があり、似たような働きを持っています。
逆に動物、植物それぞれしか細胞内に存在しない部分もあります。
・動物と植物の細胞に共通するもの
ミトコンドリア、リボソーム、リソソーム、小胞体、ゴルジ体、ペルオキシソーム
・動物の細胞にのみあるもの
中心体
・植物の細胞にのみあるもの
細胞壁、葉緑体、液胞
動物でも植物でもない生きものとは
地球上の生物に関して動物か植物か、という視点で見てきましたが、そのどちらでもないものもあります。
顕微鏡を使わなければ目視することができないバクテリア、菌類などの微生物は、どちらでもありません。
また、身近なものではキノコが動物にも植物にも属さないものです。キノコは地面や木の肌から生えていることもあり植物だと思われがちですが、菌類なので動物でも植物でもないのです。
植物の定義として光合成があると説明しましたが、キノコなどの菌類は光合成はできません。寄生する動植物から栄養をもらうという点では動物的ではありますが、細胞などの面でも動物にも分類されません。
新たに発見された「ハテナ」と名付けられた鞭毛虫は葉緑体に核があるなど、動物と植物の両方の特徴持ち合わせているといいます。
まだ詳しいことはわかっていませんが、生物の進化の謎を解くカギになるのではと研究が続けられています。
地球が誕生したのは約46億年前と言われ、その後、8億年程経ってから有機物から全ての生命へと繋がる原核生物が誕生したとされています。
しかし、ハテナのような生物が発見されるなど、まだまだ解明されていない部分も多く世界中で研究が続けられています。
動物と植物のどちらか。どちらでもないもの。どちらの特徴も持ち合わせるもの。生物の謎はまだまだ尽きそうにありません。